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今月読んだ本with今年からのツン読(2008年10月)

 今月読んだ本とそのコメント。独断と偏見の5点満点で評価します。

200810311もしも、私があなただったら(光文社文庫)
 会社を辞め、ふるさとの博多で小さなバーを経営する藤川啓吾。その藤川の元に会社時代の友人の妻・美奈が突然訪ねてくる。美奈は藤川に対して驚くような相談を持ちかけてくる。

 成熟した人間関係の上に表現される中年の恋愛劇。ドロップアウトした主人公・啓吾、夫婦関係が冷めた美奈など第二の人生を軸として複雑な心境を背景とした恋愛模様が繰り広げられる。ただ、いろいろと勘繰らせる伏線の割にはどちらかというとおとなしい展開だと感じた。
 この小説の面白さは、タイトルのとおり、相手がどう考えていたか?どう考えているか?という思念に縛られた主人公の右往左往ぶりにあると思う。人と接するときに必ず考えてしまうこと、読者に対してはいろいろと共感がわいてしまう部分じゃなかろうか。
★★★☆☆


200809305祭りのゆくえ―都市祝祭新論
 『祭り』を観るとその町や地域、社会の在り方が見えてくる。
 現代の祭りをみることで、これからの社会の姿をみようというのが本書だ。

 取り上げられた祭りは、阿波踊り、よさこい、ねぶた、博多山笠など。
 特によさこい(YOSAKOI)は日本中を席巻しかなり気になる存在だ。また取り上げられた祭りはどれもどこかで行われている祭りをコピーして土着化させたものばかりだ。
 いまでは東京の夏の風物詩の一つとなっている高円寺の阿波踊りも徳島の阿波踊りを模倣したもので、高円寺の成功とともに関東一円に阿波踊りが広まった経緯が紹介されている。また、高知のよさこいも北海道のYOSAKOIソーラン祭りを筆頭に日本全国への広がりを見せている。
 いずれも模倣とはいえ、年々回を重ねるごとにレベルも上がり一つの祭りとしての地域への定着化が図れている。しかしながら、従来までとは違った地域の在り方に多大に祭りの在り方が影響を受けていることも書かれている。
 また、博多祇園山笠の章では、山笠の祭り(神事)としての神秘性・閉塞性、模倣した北海道**地区の地域を活性化させるための努力、両地区の邂逅などが書かれていて非常に興味深いものがあった。


 本書を読んで、現代の祭りとこれまでの祭りの違いは何だったか?という問いに対しては二つあると思われる。
 ひとつは神社仏閣を中心とした神事としての祭りか否か(イベントか)、もうひとつは祭りが目的として行われているのか手段として行われているのか?後者は特に地域との結びつきをどうするかという点で顕著に現れる。
 特にイベントとしての祭りがこれから10年後、20年後にどのような姿となっているかという点は興味があります。

 社会、地域、家族の在り方が変わっていく中で、どのような形にしても祭りが人の心を支えている部分が垣間見える良書です。
★★★★★


200810312「世間」とは何か (講談社現代新書)
 よく使われる『世間』という言葉。しかし、世間とは何かと考えるとそれは形があるようでなく、掴みどころがない。しかし、社会の中でこれほどあいまいでありながら必要な言葉はない。
 本書ではこの『世間』にスポットをあてる。有史以来、日本の中で世間もしくはそれと同等な概念を社会の在りようとあわせて掘り下げていく。古くは万葉集などから始まり、夏目漱石の坊ちゃんなどからその時代の世間があぶりだされる。

 個人的には敷居が高かった。もっと、予備知識を勉強してから本書に取り組みたい。
★★★☆☆


2008103198予知夢(文春文庫)
 映画化にあわせて読み始めたガリレオシリーズ。本書はシリーズ2冊目、1話読み切りの短編が5編入っている。
 超常現象やオカルトと思える事件を科学的論理的考察力で解明していく。今回は、予知夢やポルターガイストといった現象が解明される。超常現象が紐解かれる楽しさはもちろんあるが、その紐解かれた後のトリックや真相が特に面白い。
 超常現象と思ってしまう草薙刑事と事件の真相を知る登場人物たちの視点の違いや、解明されるとあっという間に垣間見える人間味やどろくささがこのシリーズの面白さかもしれない。
★★★☆☆


2008103199容疑者Xの献身(文春文庫)
 ガリレオシリーズ3作目。3作目でとうとう長編小説となった。
 高校で数学教師をしている石神は、アパートの隣で暮らす花岡靖子に思いを抱いていた。ある日、靖子のもとに元夫の富樫があらわれる。口論の末に富樫を殺してしまう靖子。そこに石神は救いの手を差し伸べる。

 大学時代の友人であり湯川が唯一天才と言い切れる数学者・石神との切なく哀しい攻防は見物。そして、人間模様の面白さにひきつけられる。そして、あっと驚くようなトリックの存在には脱帽した。仮にシリーズではなくてもミステリとしてよくできた作品だった。
★★★★★


200810315箱舟はいっぱい (小学館文庫)
 藤子・F・不二雄氏が1970年代に作成されたSF短編集3巻目。
 今読んでもまったく遜色のない内容、特に扱われている社会問題が色あせないのはすごい。

 地球滅亡の危機を前に脱出ロケットへの搭乗権を巡り隣家が仲たがいする『箱舟はいっぱい』。戦後、孤島で一人こもっていた兵士・太吉。日本へ戻ると故郷はダムの下に沈んでいた『ノスタル爺(じい)』。過去に夢カメラとして映像化された『ミニチュア製造カメラ』、『タイムカメラ』などがある。
 ドラえもんなどでみせるファンタジーな要素にどこかシニカルな風刺が面白い短編がそろっている。
★★★★☆


200810316きいろいゾウ(小学館文庫)
 なかばかけおち同然で都会から田舎へ移ってきた夫・無辜歩(ムコさん)と妻・妻利愛子(ツマ)。売れない小説家ムコさんと明るい妻の幸せな田舎暮らしの日々。ある日、ムコさんに届いた手紙をもとに、ムコさんはツマを残して東京へと向かってしまう。

 わけありの二人のほのぼのとした田舎暮らしの日々がつづられる。ツマが語る日常とムコさんの日記で締めくくられる日々の記録。ほのぼのとした幸せな生活を送りながらも、それぞれが過去に背負った陰がゆっくりと二人の生活を蝕んでしまう。読後感は台風一過のような感じ、映画化するとおもしろいかも
★★☆☆☆


で、とりあえず積んでおく本。

道をひらく
ZOKUDAM
岸和田だんじり祭りによるまちづくり―文化と伝統景観を生かして
街場の中国論
日本数寄(ちくま学芸文庫)
幸福論 (第1部) (岩波文庫)
カンガルー・ノート (新潮文庫)
最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版
イルカと、海へ還る日(講談社文庫)
をんな紋―あふれやまぬ川 (角川文庫)
日本という方法―おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)
女人囃子がきこえる
私の個人主義(講談社学術文庫)
新釈 走れメロス 他四篇
街道をゆく 11 肥前の諸街道(朝日文庫)

ブクログ→
こんな本を読んでいる。

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